不眠症とは

 不眠症にはさまざまなタイプがあり、不眠症のタイプによって治療法もかわってきます。

 
 睡眠が十分に確保されないと、日中の眠気、だるさ、集中力低下などから昼間の活動にも影響がでてしまいます。不眠症は入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害の四つに分類されます。

 入眠障害とは、寝つきが悪くなかなか眠りに入ることができずに、ベッドで何時間もごろごろしている状態が続きます。悩み事や不安を抱えている時に起こりやすいとされています。

 中途覚醒は、一旦眠りに入れても、夜中に何度も目が覚めてしまう場合のことをいいます。

 早朝覚醒では、朝早くに目が覚めて、その後眠れなくなるといった症状です。早朝覚醒は年齢をかさなるごとに増えていく傾向にあります。

 熟眠障害は睡眠時間は確保できているにもかかわらず、ぐっすり眠った気がしない、熟眠感得られないといった症状です。

 いずれも専門医による問診、診断、治療が必要になります。お悩みの方はお早めにご相談ください。

不眠症の原因

 不眠症となる原因として様々な要因が考えられています。


 日頃の悩みやストレスを多く抱えている場合は、脳がリラックスできずに緊張状態がつづいてしまいます。

夕方から夜遅くまでの勤務時間がつづいたり、長時間パソコンのモニターを見ていたり、スマートフォンの操作時間が長かったりすることも原因のひとつとなります。

 そのほか、過度の飲酒、喫煙、カフェインの含まれた飲料の飲みすぎなども理由のひとつとされています。

 寝室での睡眠環境も深い眠りにはかかせません。

不眠症の治療と対策

 良質な睡眠を得るためには、普段からの心がけが非常に重要です。


 睡眠環境の見直し、日ごろの定期的な運動、規則正しい食生活、日光浴などが非常に効果的です。

ところが、現代のストレス社会においてはなかなか思うように時間を作れないことも多いことは確かです。

 専門医による薬物療法が有効な場合もあります。現在は依存性の少ないお薬や睡眠ホルモンに働きかけるホルモンなどお薬の選択肢もふえております。

 

①定期的な運動

 定期的な運動は睡眠に対して非常に効果的です。有酸素運動をすることにより睡眠深度が深くなることが判明しています。日常の活動量が増えることで、日中の覚醒度もあがり、睡眠深度に影響を及ぼします。就寝直前の運動は逆効果になってしまう場合があるため、就寝直前はストレッチ運動などの軽い運動にとどめるようにしましょう。

②睡眠環境の改善

 お布団、ベッドへの移動は眠気を感じてから移動するのが最善です。お布団、ベッドは眠るために使用するものだと認識しましょう。ベッドの中でスマートフォンの使用やテレビ鑑賞をすることは睡眠へ悪影響を及ぼしてしまいます。特にスマートフォンやテレビからの光刺激は覚醒を誘発し、睡眠導入の妨げとなることが報告されています。

 寝室の適切な温度、湿度、光量も大切です。遮光カーテンを使用し、極力夜間は光刺激を浴びないようにすることにより良質な睡眠を得ることができるようになります。

 朝起床時にすぐにカーテンをあけ、光量を寝室に取り込むことも大切です。

③睡眠へのこだわりをなくす

 生活スタイルや勤務時間などにより日中の覚醒刺激は異なります。適切な睡眠時間はひとそれぞれです。1日に何時間以上眠らなければならないということも決まっていません。その人にとっての良好な眠りの質と睡眠時間が確保されることが重要です。

 基本的に年齢とともに睡眠時間は短くなります。年齢を重ねるごとに早朝覚醒が出現する割合が増えることがわかっています。これは人間本来の生理現象であって病気ではありません。大事なことは日中に眠気があるかないかで判断することです。

④食生活と睡眠の関係

 食生活は睡眠に影響を及ぼします。極度の空腹状態では交感神経が活発となり、リラックスできない状態に陥るため、良好な睡眠を得ることができません。
 辛い物などの刺激物は就寝直前に摂取することは控えましょう。脂っこいものを摂取することも消化の妨げになり、胃もたれや腹部不快感を誘発するため避けることが望ましいです。

⑤水分摂取量と睡眠の関係

 尿意により睡眠が妨げられてしまいます。就寝前に水分を取り過ぎてしまうと夜間に尿意をもよおし、中途覚醒してしまう可能性があります。就寝前の水分量には充分な配慮が必要で、口腔内を湿らす程度にとどめましょう。

⑥カフェイン摂取と睡眠の関係

 コーヒー、紅茶、緑茶にはカフェインという覚醒作用をもつ物質が含まれていて、これがよりよい睡眠を妨げてしまいます。
 カフェインは通常、摂取後30分後くらいから脳に作用を及ぼし、その持続時間は4~5時間といわれています。つまり就寝前にカフェインを摂取することは極力控えるようにしましょう。

 4~5時間前までならこれらの飲料を摂取しても睡眠に与える影響は少ないということになります。
 たとえば夕食後の午後8時ごろにコーヒーを飲まれる方は午前0時から午前1時ごろまではカフェインが睡眠を妨げていて、なかなか寝付きにくいといったことがあるかもしれません。カフェインを摂取する場合は夕方4時くらいを目安に摂取を控えるようにしましょう。

⑦アルコール摂取と睡眠の関係

 アルコールは良質な睡眠の妨げとなります。飲酒をすると眠気が出現するため入眠の助けとはなりますが、睡眠の質は非常に悪く、夜間に目覚める回数が増えたり、早朝に覚醒することが増えてしまいます。眠るために飲酒をすることは逆効果といった方がいいでしょう。
 またアルコールには耐性がありますので、入眠効果を期待してアルコールを摂取する場合は、飲酒量が増えていく可能性が潜んでいます。放置していればアルコール依存症にいたることもあります。良好な睡眠の質を得るためには適度な飲酒をこころがけましょう。

⑧喫煙と睡眠の関係

 たばこにはニコチンという物質が含まれています。煙草をすうことにより脳内のニコチンの量が増え、その結果アドレナリンの分泌が増え、交感神経が亢進します。交感神経が優位になると血圧と心拍数が上昇し、脳が興奮状態になります。同時に脳が覚醒します。そのため、寝る前のタバコは、入眠困難、浅い眠りなど、睡眠障害の原因となります。

 就寝前の喫煙は控え、可能であれば禁煙することが望ましいでしょう。

⑨ストレスと睡眠の関係

 ストレスは脳を緊張状態にし、脳がリラックスすることを妨げます。心配事や考え事があっては脳が活動状態のままになってしまい、眠りに入ることができません。布団やベッドの中で日中のの悩み事をあれこれ思案することはやめましょう。布団やベッドは就寝するための場所であるため、考え事をする場合はかならず就寝場所を離れて、考えるようにしましょう。

⑩起床時間と睡眠の関係

 睡眠に悩みを持つ方にとって非常に困難なことではありますが、日々起床時間を決めることは睡眠改善にとても大切です。毎朝同じ時刻に起床することで体内時計が正常に機能しはじめます。

 遅い時間に就寝した翌日でも朝の起床時間を一定に保ち続けることが大切です。その当日は睡眠時間が少ないため日中がしんどく感じられるかもしれませんが、長期的な視点でみれば睡眠の質によい影響が与えられることが報告されています。

⑪日照時間と睡眠の関係

 太陽の光は体内時計に影響を及ぼします。太古以来、人は太陽の光とともに起床し、日没とともに睡眠するようにして体内時計を調整してきました。可能な限り太陽の光を浴びるようにしましょう。睡眠には脳内のメラトニンというホルモンとセロトニンというホルモンが深く関係しています。太陽光をあびることでメラトニンというホルモンが分泌され、体内時計を正常にしてくれるようになります。また日光をあびることでビタミンDの生成が活発となり、その結果セロトニンの分泌も増加することが報告されています。

⑫不眠症の薬物療法

GABA受容体作動薬

 脳の興奮を抑えるGABA(ガンマアミノ酪酸)という神経伝達物質の働きを促すことにより、脳がリラックスしやすい状態となるため、脳の活動を休ませて眠りへと導きます。
 お薬の構造から「ベンゾジアゼピン系睡眠薬」と「非ベンゾジアゼピン系睡眠薬」に分けられ、作用時間の長さから超短時間型、短時間型、中間型、長時間型というふうに分類されています。患者さんの状態に合わせてどのタイプのお薬が適切かを選択してきます。不眠症のタイプや生活状況、勤務時間などの背景を考慮し使い分けられています。

 ベンゾジアゼピン系睡眠薬としては、トリアゾラム(商品名ハルシオン)、ブロチゾラム(商品名レンドルミン)、フルニトラゼパム(商品名サイレース)、エスタゾラム(商品名ユーロジン)、クアゼパム(商品名ドラール)、フルラゼパム(商品名ダルメート)などがあげられます。

 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬としては、ゾルピデム(商品名マイスリー)、ゾピクロン(商品名アモバン)、エスぞゾピクロン(商品名ルネスタ)などがあげられます。

メラトニン受容体作動薬

 メラトニンとは睡眠ホルモンとも呼ばれ、体内時計の調節に大きく関係し、睡眠と覚醒のリズムを調節するホルモンです。メラトニン受容体作動薬は、脳内のメラトニン受容体を刺激することにより、体内時計を整え、睡眠と覚醒のリズムを正常化することにより睡眠を促します。

 メラトニン受容体作動薬としては、ラメルテオン(商品名ロゼレム)があります。

オレキシン受容体拮抗薬

 オレキシンとは起きている状態、つまり覚醒を維持する脳内物質です。オレキシン受容体拮抗薬は脳内でのオレキシンの働きをブロックすることにより、脳の覚醒に関わる機能を抑制し、覚醒状態から睡眠状態へと導きます。

 オレキシン受容体拮抗薬としては、スポレキサント(商品名ベルソムラ)とレンボレキサント(商品名デエビゴ)とがあります。